何色にも染まらない

4/19
前へ
/19ページ
次へ
ある日、俺はいつも通り事務所で仕事を待っていた。 何の変わり映えもない一日。 この日も依頼0のまま、仕方なく繁華街にでも繰り出そうかと思っていた。 「さて……今日は何を食うかな……。」 もう、この繁華街は自分の庭のようなもの。 『前の仕事』もこの街を拠点に活動していたので、美味い店はほぼ知り尽くしていた。 下手なグルメ誌よりも詳しいと自負している。 「よし、焼き肉にするか。」 その中で、俺は会員制の焼き肉店に向かうことにし、事務所を出ようとドアに手をかける。 その時だった。 ドアの反対側に人影が見えた。 (やれやれ……こんな時間に依頼か。ろくな仕事じゃないな……。) 俺は手を引っ込め、渋々デスクに戻った。 「遅くにすみません。『仲介屋』はここで間違いないですか?」 入ってきたのは、若い男だった。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加