何色にも染まらない

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「私の職場の『事情』……ご存じですよね?」 向こうも俺のことを知っている。 今更、隠しても仕方ないと思った。 「あぁ。いいぜ。そう言うことなら依頼、受けてやる。報酬額は?」 「貴方の言い値で構いません。100億以上は、分割になりますが……。」 「そんなに要らねぇよ。じゃ、お前の事の顛末を見守ってから決めようじゃねぇか。」 こうして、俺はこの男の依頼を受けることにした。 依頼人の名は、拳児。 この界隈のある業種では大手の『企業』である会社の御曹司だ。 俺も昔はこの会社にいた。 地位を求める幹部たちの、その泥仕合のような争いに嫌気がさし、俺は会社を去った。 今思えば、この幹部たちを少しどうにかしてから去った方が良かったかもしれない、そう後悔し始めている。 男の一世一代の告白にさえ、ちょっかいを出そうとしているのだから。 「まずは、相手のことを教えてくれ。」 俺は、手帳を開き拳児の言葉を待った。
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