そこにある黒い点を指で押してみてください

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先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 「君が僕のことを好きだと言ってくれたとき、大きく揺れ動いた。でもダメだと思った。聞いてくれ。僕は亡き恋人のために命を捧げる覚悟だったんだ。でも君があまりに優秀で、キレイで、魅力的だから。」 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 「そう、僕は二次元転移の魔法を自分から軍部に売り込んだんだ。数年前に戦争で亡くした恋人の復讐がしたくて、敵国が憎くて、この魔法を使った軍隊移動のプランを考えた。軍部は大喜びだったよ。滅ぼしたいと思った国はとっくに潰えた。その国に住む人全員が悪いわけじゃないことは分かってるけど、その国のすべてが憎かったから。そしてこの魔法に味を占めた軍部は他の国まで侵攻し始めた。そのたびに多くの命が失われたけど、僕にはどうでも良かった。あの人への供物くらいにしか思わなかった。でも僕は、君に出会ってしまった。」 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 「最初は理性が勝っていた。だけど、君が僕の魔法を真似てみせた時、二人きりになるチャンスが巡ってきたと思ってしまった。後継者は確かに必要だけど、それ以上に僕は君と二人きりになりたかったんだ。印を結ぶ必要なんてないのに手を重ねてしまったこともあった。ああ、いっそ軍の話をしたときに君が蔑んでくれたなら戻れたかもしれない。けれど君は受け入れてくれた。これで運命は決まった。」 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 先生が私を抱きしめた。 「ソフィラ、君が好きだ。」 先生の唇と私の唇が重なった。 私は先生の懐にしまってある白本に触れながら、先生に向かって魔法を放った。 開いた本を見ながら、私は絶望していた。 白い紙の中にひとつポツンと染みた黒い点。 それが先生だった。 感情に支配されコントロールを失った魔法は、先生を点の世界たるゼロ次元に転移させた。 しかし、真の絶望とは遅れてやってくるものだ。 「おぉお・・・」 私は自分のしでかしたことに震え、嗚咽を漏らしながら小さくなってしまった先生を指でなぞった。愛しい人を撫でるごく自然な行為であり、それ以上の意図はなかった。 紙質を感じながらツツ、と指を合わせて黒い点に辿り着く。 その存在に触れたくて、温もりを感じたくて、無意識のうちに力がこもる。 プチンとした感覚が指先を捉えた。 そして思い出す。 『異なる次元からの干渉に対してはとても脆いんだ』 私は今、先生を潰したのだ。
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