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 男だけなら斬るのは簡単だが、キャルを危険に晒すわけには。  前方にはレイド国の馬車と騎士たち。   「早く止まれ!」  このままでは不利だが突っ込むしかない。  ルークはキャルを抱えた男の馬を抜かしながら男を脅す。  失速した馬から飛び降り、レイド国の馬車の方に逃げる騎士をルークは捕まえた。  ルークと騎士は揉み合いに。  ようやくキャルを奪い返したが、ルークとチャーリーはレイド国の騎士たちに囲まれてしまった。  こちらはルークとチャーリーだけ。  レイド国の騎士はおよそ10人。  犬も10頭。 「……キャル」  ルークがシーツを捲ると、キャルの小さな耳がピクッと動きホッとする。 「ルークの顔に怪我はさせちゃダメよ」  あの顔が好きなのとうっとりするクリスティーナの言葉に、ルークは眉間にシワを寄せた。  ……なんだか犬の声がうるさい……?  犬の唸り声でキャルはゆっくりと目を開けた。  だが目の前は真っ白。    これはどういうこと?  もぞもぞと動いてみても白い布が続く。  しかも足元は不安定だ。  ウゥゥ〜という犬の威嚇する声が聞こえるけれど、犬になっても犬の会話が聞こえるわけじゃないことにガッカリする。  キャルはようやく白い布から顔を出した。  ……これはどういう状態?  なんでドーベルマンがいっぱい?  なんであの人たち剣を構えているの?  あ、派手なあの女の人だ。   「キャル、気が付いたか?」  見上げればイケメンのルークの顔。  でもちょっと困った顔?  どうしたの?  犬たちの威嚇はどうしたのだろう?  まさかルークを威嚇している?  ドーベルマンは見た目が凛々しいんだから、むやみに威嚇とかしちゃダメでしょ。 「キャンキャン!(おすわり!)」  キャルは介助犬訓練士のつもりでドーベルマンたちに指示する。  ドーベルマンは嘘のように大人しくその場におすわりした。 「キャン!(伏せ!)」  地面に顔をつける犬たち。  その場の全員が異常な状態に息を飲む。 「……キャルに従っているのか……?」 「そうみたいだね」  ルークとチャーリーはキャルを見つめる。  レイド国王女のクリスティーナはギリッと奥歯を鳴らした。
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