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「ルーク。俺たち犬は斬れないけれど、人なら正当防衛……かな」  相手は剣を抜いているしと微笑みながら剣を手にするチャーリー。  待って、優等生眼鏡のくせに剣を使えるの?  セコくない? 「おまえら如き、片手で十分だ」  ルークはキャルを抱っこしたまま、剣を鞘から抜く。   「キャウ?」  何そのヒーロー発言! 「何よ、そんな犬!」  あ、完璧な悪役発言。  キャルはペロッと舌を出しながら、真っ赤なドレスの女性を眺めた。  ルークを好きなんだよね?  でも剣を向けちゃうの?  よくわからないなぁ。  まぁ、イケメンなのは否定しないけどね。  私だったら、好きな人には優しくしたいな。  キャルは短い足をルークの顔に精いっぱい伸ばした。  全く届く気配はないけれど。  怪我はしてほしくない。  剣で斬られたら痛いでしょ?  よくないよ。 「……キャル? 怖いのか?」  まんまるな目で見つめられたルークは思わずキャルの小さな口に触れるだけの口づけをする。  犬だけれど、これはファーストキス!  大丈夫だと微笑むルークにキャルの心臓はドクンと跳ねた。  短いキャルの手は光りだし、人のような手に。  ふわふわの毛は輝く長い髪に。  急に背が高くなったかのような奇妙な感覚にキャルは首を傾げる。 「……女神だ」 「まさか、女神様に剣を向けてしまったなんて」  驚きすぎて剣を落とした騎士たちは全員その場に跪く。 「キャウ?」  あれ? 人の手だ。  でも人の言葉が話せない?  見上げれば犬の時よりも近くにイケメンの顔! 「キャウ!」  近い! イケメンが近い! 「……キャルの目は黒いのか」  犬の時と一緒だなとイケメンルークに破壊力満点の笑顔を向けられたキャルは真っ赤な顔になった。
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