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「女神の遣いは渡さない」
すっかり大人しくなった犬たちと戦意喪失した騎士たち。
残るはおまえだけだがどうする? とルークはクリスティーナを睨みつけた。
「なんなの! ずっとルークと結婚するって決めてたのよ! 急に出て来たそんな女!」
「女神の遣いに失礼な言動はやめてください」
「チャーリー、あんたまで! 私がどれだけルークを好きか知ってるでしょ!」
「えぇ、ルークがどれだけあなたを嫌いかも知っています」
下がってもいない眼鏡を押し上げながら、他国の王女に遠慮なく言ってしまうチャーリーに、ルークは思わず吹き出す。
「おまえとは絶対に結婚しない」
好みじゃないんだと肩をすくめるルークの頬を、キャルは優しく包み込んだ。
「キャウキャウキャウ」
嫌いでも女の子にそんな言い方はダメだよ。
「……可哀想って?」
コクコクとうなづくとルークは困った顔で笑う。
「俺はキャルの方が何倍も魅力的に見えるけれど?」
「キャウ!」
ホストか!
金髪の女と楽しそうに笑うルークに、クリスティーナは唇を噛んだ。
「帰るわよ!」
馬車に乗ろうとしたが、騎士たちは跪いたまま動こうとせず、誰も馬車の扉を開けない。
腹を立てたクリスティーナは馬車をヒールで蹴った。
だが当然ながら負けたのはヒール。
あっさりポッキリ折れたヒールにクリスティーナの怒りはさらに膨らんだ。
「覚えてらっしゃい!」
本当にそんな捨てセリフを言うんだ。
指をさされたキャルは、クリスティーナの見事な悪役っぷりに感心する。
「キャウ?」
あれ? イケメンが遠くなっていく?
もとの犬の手に戻ったキャルはまんまるな目で首を傾げた。
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