嫉妬に狂い、吠える夜

5/11
前へ
/41ページ
次へ
佐橋の俺に対する気持ちには 以前から気づいていた。 俺を見る眼差し、息遣いは 他の人へのそれとは明らかに違ったから。 決して佐橋のことは嫌いではなかった。 言葉にしなくても 動いていく時は動いていくものだし。 ただ俺は佐橋を選ぶことなく、 彼との出逢いを待って彼の手を取った。 それが全てだ。 佐橋と喫煙室を出て、窓から空を見た。 今頃、彼は他部署の人たちと 秋に予定している広告フェアの件で ミーティングをしていて、 俺のことなど微塵も考えていない。 職場では周りの手本になるような、 仕事のできる憧れの上司。 俺も頑張らなきゃな、と呟き、 フロアに戻るためのエレベーターに 乗り込んだ。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加