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彼はまさに、花から花を飛び回る蝶々だ。
俺だけでは飽き足らず、
華やかな笑顔と儚さを抱かせる容姿で
無自覚に周りを虜にしていく。
名前を挙げた伊藤だけではなく、
フロアに彼が現れるとそこにいる男性が数人
浮足立つのをこの目で確かめていた。
いつか、決して遠くない未来に、
きっと彼は俺から離れてしまうだろう。
中身の乏しい、平凡な俺が
魅力的な彼を繋ぎ止めることは
簡単なことではないから。
俺に組み敷かれたまま、
乱れた息を整えている彼を見下ろし、
俺は再び口を開いた。
「ごめんね」
「え」
次の言葉は、怖くて言えなかった。
こんなに愛しているのに、
やっぱり寂しい気持ちは付き纏う。
何があっても離れないと言ってくれたが
俺の本性を知ったら、
きっと彼だって逃げ出してしまう。
もし俺が彼だとしても、そう思う。
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