始まる、爛れた関係

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「少し川瀬くんのことを訊いてもいいかな」 「あ、はい」 「うちに大学時代からバイトで入って、 今年正社員として就職したってホント?」 「間違いないです。入社5年目です」 「すごいよ。ずっとコピー書いてるんだよね」 「はい」 「メンバーの中でいちばん若いのに」 「まあそうですね。岸野さんこそ入社3年目で 広告デザイン賞の常連ですよね」 「たまたまだよ。運が良かっただけ」 「謙遜しないでください。すごいです」 「ふふ。ありがとう。川瀬くん」 「何でしょうか」 反射的に答えた俺に、 彼は顔を寄せ、こう囁いてきた。 「いい匂いがする‥‥香水じゃない、よね」 「あ、」 気づかれたか。 うっすら汗をかくと匂い立つ、 甘く独特な体臭の存在を自覚したのは、 高校生の時だ。
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