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「佐橋が何故?」
撫然とした表情の佐橋が彼の隣に座った。
「川瀬くん、俺の指示だよ。今回の関係者の
ひとりだからね。録音はしないから、
自由に話していいよ」
彼はそう言って穏やかに微笑んだ。
俺はひとつ息を吐き、深く頭を下げた。
「どんな理由があっても無断欠勤は悪い
ことです。岸野さんの計らいでこの程度の
処分で済んだと聞きました‥‥この度は、
本当に申し訳ありませんでした」
「うん。もうしないでね。ということで」
ぱたん、と閉じた音に驚き、頭を上げた。
彼がそれまで聞き取りのために
テーブルに広げていたノートが
閉じられた音だった。
僅かな沈黙の後、彼が再び口を開いた。
「今後のことを話そうか」
「時間は‥‥10分でいいですよね」
佐橋が腕時計に一瞬目をやり、俺を見た。
「川瀬。腹を括れよ」
「‥‥え、何」
微笑みを絶やさない彼と
鋭い目つきの佐橋を交互に見比べ、
俺は言葉を失った。
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