始まる、爛れた関係

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その夜。 部署のメンバーで彼の歓迎会を開いた。 参加者は吉川隆之、佐橋雄大、秋津昌美、 宮嶋恭介、神代綾、そして俺と彼。 場所は会社近くの個人経営の居酒屋で、 定時直後から終電間際まで 際限なく飲み倒した。 「あー、飲んだ飲んだ」 今揃う部署のメンバーとは とても風通しのいい関係を築いていて、 仕事を離れても楽しく過ごせる。 自分は最年少だが、 この部署では社歴の関係で年上が皆、後輩。 1歳年上なのは神代と宮嶋、 2歳年上なのは秋津と吉川。 佐橋が俺と同じ年齢だ。 とはいえ、先輩風は吹かせたくなかった。 だから基本的に敬語を使っている。 「では失礼します。お疲れ様でした」 居酒屋を出てすぐ。 地下鉄で帰宅する俺は、 手を上げてひとり皆の輪から離れた。 輪の中には寂しそうな表情を見せる彼の姿。 何となく目を逸らすことができなくて 彼にそっと微笑んだら彼は小さく頷き、 俺に近づいてきた。 「え」 思わず驚きの声を上げる俺の腕に、 彼の腕が絡みつく。 「川瀬くん、今夜泊めて」 彼の言葉に、俺だけじゃなく皆も固まった。
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