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「岸野、さん」
「何?」
ああ、この状況にまだついていけない。
地下鉄を乗り継ぎ、ひとり暮らしの
自宅に彼を連れて帰ってきた。
今日は金曜日、明日は休みだ。
いつものように録り溜めしたドラマを
観ながら、朝まで寝ないで過ごすはずが。
俺はソファに彼と隣り合って座っている。
「ホントに泊まっていくんですよね」
「今、何時だと思ってるの?電車なんて
もうとっくに終わってるよ」
「あ、はい‥‥」
とりあえず彼にシャワーを浴びてもらおう。
ひとつ息を吐き、ソファから立ち上がると
俺はクローゼットの扉の前に立った。
「岸野さん、部屋着貸しますから。
シャワー浴びて来てください」
「ありがとう。川瀬くん、一緒に入る?」
「いやっ、俺は岸野さんの後で大丈夫です」
恥ずかしさを堪えながらクローゼットを
開け、衣装ケースからスウェットの上下と
未使用のトランクス、バスタオルを
取り出した。
「では、浴びて来てください」
意を決して彼の方へ振り向くと、
俺のすぐ後ろに彼が立っていた。
容赦なく絡まる視線。
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