Episode.1

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「おー、すごいね。すごい、すごい」 自転車の荷台に背中合わせで座って、阿保みたいに「すごい」を連呼するそいつ。 両手両足では足りないほど吐いたはずの溜息の数も、まだまだ増えていく。 「俺、二人乗りって初めてなんだ。すごいねえ、らくちん」 そいつは「あはは」と笑いながら私の背にもたれかかってきて、重みに耐えきれず自転車がぐらつく。 「ちょ、重い! ばか、揺れる!」 「だいじょうぶ。転ばない、転ばない」 どうしてこんなことに……。下手に声を掛けずにさっさと通り過ぎればよかった。 頭を抱えたくなる衝動を堪えて、代わりにとても不機嫌な顔で力任せにペダルを踏む。 街灯に照らされた薄暗い道を、重量オーバーを知らせるようにギーギーと悲鳴を上げる自転車を誤魔化しながら進んでいけば、今朝通った住宅街に出た。 「あ」 「何、やっと思い出したの? ていうか何でこんな近場で迷子になんのよ。で、思い出したの?」 「あれ、おおぐま座だ」 一気に脱力して項垂れれば、背中に寄りかかる重みが一層増して眉を吊り上げる。
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