Episode.3

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「オプションで後ろカゴもお取り付けできますが、どうされますか?」 最寄り駅より三つ手前の駅に併設された大型ショッピングモール。その中にある自転車屋の店員が愛想よく尋ねてきて、私はすぐに「いらないです」と返した。 「いいの? 後ろカゴがあったら、荷物とかいっぱい乗せれるんじゃない?」 「……この歳で後ろカゴ付けてんのは野球部くらいだし」 店員がいる手前「ダサいし」という言葉は飲み込んだ。そしてもう一度「いらないです」と告げる。 店員は「最終調整に一時間ほど頂きます」と愛想よく笑うとバックヤードに消えていく。その背中を見送って、お母さんが腕時計に視線を落とした。 「一時間だって。待ってる間にフードコートで何か甘いものでも食べようか。未来、デザート頼まなかったでしょ」 「あー……うん。先に行ってて。買いたいものあるから」 「あらそうなの? だったらお母さんも一緒に……」 ついて来ようとしたお母さんを振り切って店を飛び出す。 館内図で目当ての店の場所を確認した後、エスカレータに飛び乗った。
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