Episode.4

4/12

29人が本棚に入れています
本棚に追加
/132ページ
もしかしてあいつ、起きてはいるけど雨が降ってて面倒臭いから外に出てこないだけなんじゃないの? そう思うとどんどん腹が立ってきた。 血まみれになりながら背に担いで走ってあげたのに、お礼の一言もないわけ? まぁお母さんが高いバームクーヘンを持ってきてくれたし、それ以上の感謝を求めている訳でもないけどさ。 でも普通助けてもらったなら「ありがとう」の一言くらいあても良くない? 腹いせまがいに自転車で水溜りに突っ込む。水飛沫が上がった。 もう知らない。これからは勝手に迷子になっとけ。私は絶対に後ろに乗っけてやんないんだから。 唇を突き出して強くペダルを踏み締めた。 そしてあっという間に梅雨の季節も後半に差し掛かり、晴れ間が少しずつ増え始めていた。 午後の授業をぼんやりと聞き流しているといつの間にか終わっていて、あっという間に放課後になった。 雨は昼間には上がっていて、青い空が見えている。 天気がいいうちに、と足早に学校を飛び出た私は鬱々としていた雰囲気を吹き飛ばすように軽快に自転車を漕いだ。 丁度三角公園の側の信号で引っかかり、片足を付いて赤になるのを待つ。 その時、目の前を通り過ぎていく車と車の間から、見覚えのあるシルエットが映る。 顔が次第に険しくなっていき、きた道を引き返そうとペダルに足を掛けたその瞬間「あ」とハルカが泣きそうな顔をして手を差し出した。 ムカつく。泣きたいのはどっちかって言うと私の方でしょうが。
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加