Episode.6

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強張った顔でペダルを踏みしめる。けれど前に進むほど、喉の奥が熱くなった。 グリップを握りしめる手は驚くほど白く、その白い手ももうぼやけて見えた。自転車を漕ぐ足は次第に動かなくなっていき、そして遂に地面に足を付いた。 地面に落ちている項垂れる影をぼんやりと見つめていたその時。 「あれ、ミク?」 聞きなれた優しい声が耳に届いた。頭上から聞こえたその声を探すように顔をあげる。 「誕生日探し、何か忘れてたの?」 揺れるカーテンの奥の出窓に腰掛け、私を見下ろす。 「……ハルカ」 名前を呼ぶ声が掠れた。 「ミク? どうしたの?」 「……助けて」 絞り出した声が震える。 「息ができない、もう嫌だ、苦しい」 もうなにも見たくない。なにもしたくない。こんな世界なんて、勝手に消えてなくなればいい。 自転車のフレームをぼんやりと見つめる。「ねえ、ミク」と、ハルカが私の名前を呼んだ。 「ねぇ、ミク。おれと冒険に行かない?」 顔を上げると同時に、ハルカがカーテンを窓の外に放り出した。ドラゴンが羽を広げて飛び立つような音がしたかと思うと、ハルカが出窓に立ってそのカーテンにしがみつく。そして「よっ」と声を上げて出窓から飛び降りた。 一瞬何もかも忘れて悲鳴を上げた。 案の定着地に失敗したハルカはころんと一回転して尻餅をつく。
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