Episode.7

3/18
前へ
/132ページ
次へ
ハルカはその後も、何もなかったみたいにいつも通りだった。 学校帰りにハルカを見つけては後ろに乗せ、道端で合わなければ家の前を通った。出窓に腰掛けているときは立ち話をしたり、二人乗りで出かけたり。 まだ時折毎日が苦しくなる瞬間があるけれど、ハルカのそばは相変わらずいつも息がしやすかった。 ある日の学校からの帰り道、道端でハルカを拾わなかったので家の前を通ると、予想通りハルカが出窓に腰掛けていた。窓の下から名前を呼ぶ。 ゆっくりとこちらへ顔を向けた。今にも瞼が閉じてしまいそうな目でぼんやりと私を見つめている。 「ハルカ?」 「……ああ、ミク。こんにちは」 覇気のない声で、やっと返事をした。 「今日は外出かけなかったの?」 ぼーっと空を見上げて、返事をしない。 「ハルカってば!」 「……ん、ごめん。なんだっけ」 私から視線を外し、ぼんやりと宙を眺めるハルカ。 「だから、今日は外に出かけなかったのかって」 ハルカはぼんやりと宙を眺めたままで、まるで何にも反応しない。 「ねぇ聞いてる?」 少し苛立った声でそう返せば、ハルカはまたぼんやりと宙を眺める。そして暫くして、「ごめんミク」と返してきた。 「おれ、すごく眠くて、どうしようもないんだ。また今度でいい?」
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加