Episode.7

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『未来のミク。女の子に出会ったよ。また会えるかな』 今までずっと、人の名前なんて出てこなかったのに、突然自分の名前が書かれていて、目を見開いた。 『未来のミク』 そう自己紹介したのは、たしか初めてハルカと出会った日のことだった。 『ミクとたこ焼き半分こ』 『ミクとシウンテン。自転車すいすい』 『ミクと夜空を冒険』 増えていく私の名前に、鼓動が速まっていく。 ハルカは私と過ごしたなんでもない日常を、『幸せ貯金』に貯めていてくれた。 そう思うと、ひどくむずがゆい気分がして、頬が熱くなった。 開けた紙を元に戻し、瓶になおしていく。 「あれ……ミクがいる」 少しかすれた声が聞こえて、慌てて振り返る。 ベッドの上に座って、ぼんやりと私を見ていたハルカ。いつも、出窓に腰掛けているときの表情だった。 ぼんやりと宙を眺めたハルカは、しばらくしてハッと我に返ったように目を見開き身を乗り出す。 「おれ、どのくらい寝た?」 「……一週間くらい、寝てた」 途端、「そっか」と小さく零し抱えた膝に顔を埋めたハルカ。 いつものハルカの声ではない。湿っぽくて少し震えていた。私は離れたところから、その姿を見ていた。 「ねぇ。アメリカ、引っ越すの?」 縮こまるハルカの肩が震えた。 「……なんで」 「おばさんに。さっきまでお茶してたから」 「……隠してたわけじゃないよ」 「でも黙ってた。黙っていくつもりだったんでしょ。薄情もの」 「ちがうよ」
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