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伊倉蒼依
あたしが推してる野球選手。
今日はファン感があって入場のときにもらえる選手との触れ合いイベントの券がサイン会だった。
そして時間になってきてみたら、推しの伊倉選手だったんだから、今日のあたしはだいぶ運がいい。
「……アオかぁ」
ふとその名前を呟いてみたら、なんとも言えない気持ちになった。
顔がいいからファンになった。
ファンになって試合を見に行ったら、野球してる姿がかっこよくてさらに好きになった。
顔から入ったにわかだったけど、ちゃんと野球のことを調べていまではちゃんと野球をみている。
試合でのかっこいい姿、チームの選手と話す笑顔、こういうファン感などのイベントで見せる少年のような顔いままでたくさんいろんな表情をみてきたけど、今日の誰かを思い出したような優しい表情は初めてだった。
「あたしもそっち側になりたい」なんておこがまし過ぎるのに、あんな表情を向けられたいなんて思ってしまった。
ただの選手とファンという壁を超えるなんて到底無理だってわかってるのに。
いつか、あたしも「アオ」って呼べるようなそんか関係になりたいって思ってしまったんだ。
──11月23日
伊倉選手はあたしにとって「推し」ではなくて「好きな人」に変わってしまったようだった。
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