いつか、呼べる日まで

3/13
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
それからというもの、まずは認知されたいと思って伊倉選手に会えるような場所には全部いった。 いわば、追っかけというもの。いままでは試合で彼のことを見れれば満足していたけど、それじゃあ足りなくなってしまったから。 「うーちゃんじゃん、ビジターまで来てくれたん?」 追っかけを初めて早、半年。 ファン感以降はオフシーズンだったから、とりあえず練習場に通った。 練習場は選手寮の隣にあってそこはファンに公開されていたから、寮の練習場を行き来する選手に差し入れを渡せるようになっていた。 だからあたしも「頑張って」って毎回スポーツドリンクを渡して、そして練習している姿をみて、練習終わりは写真撮影やサインに応じてくれるので伊倉選手と交流ができていた。 さすがにオフシーズンにたくさん通ったら、伊倉選手も覚えてくれて「うーちゃんって呼んで」って、あの時つけてもらったあだ名を告げたら「あのあだ名の子なんか」って笑ってた。 で、いまはシーズンが始まって、初めてホームゲーム以外の試合を見に来てみたってとこ。 「初めてビジター来ました」 「いいじゃん。たくさん俺のこと見てってよ」 いまは試合前練習の時間。 伊倉選手は投手で、投手は外野側で練習をしているのをきいていたから、入場してすぐに外野側にきてみた。 そしたら、フェンスのところにきた伊倉選手があたしに気づいてくれて、声をかけてくれた。 なんとも嬉しい。が、あたしの希望はまだここじゃない。最終目標は「アオ」でも「アオくん」でもいい、そう呼ぶこと。つまり特別な存在になること。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!