いつか、呼べる日まで

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「動画送ったよー」 紫織ちゃんが「スマホ見て」って自分のスマホをトントンとつつく。 「……動画?わぁ……ありがとう」 「歌ちゃんと話す伊倉くん本当にいい顔してるよー」 紫織ちゃんが送ってくれたのは、あたしと伊倉くんが話してるとこを動画で撮ってくれたもの。 あの時は動揺してて伊倉くんがどんな顔をしていたのかも覚えてないから嬉しい。 「もうちょっとで試合はじまるねー。楽しみ」 「ね!伊倉くんも笠木(かさぎ)くんも投げるといいね!」 「ほーんと!やっぱり自分がいく試合では投げて欲しいよね」 笠木くんってのが紫織ちゃんの推し選手。 伊倉くんと同期で仲がいいから、練習もよく一緒にしてて、同じ場所でみていて紫織ちゃんとは仲良くなったんだ。 「それにしても今日めっちゃ天気いいよね」 「本当にー!外の球場だからなかなか日差しがキツいね」 いつも地元の球場はドームだから外で見ることがないからこうして外の球場で野球をみるのも初めてで楽しみ。すっごく暑くて日焼けが心配だけど。 何もかもが初めてで、ひとつひとつがなんだか宝物のように輝いている気がする。 そんなことを思いながら、あたしは詩織ちゃんと一緒に自分たちの座席についた。 「楽しみだな、初めての外の試合」 席についてもさっきみた紫織ちゃんがとってくれた動画の破壊力凄くてにやけてしまう。 「思い出してるでしょー?」 「思い出さずにいられないよー。まさかの出来事に推しの前で泣くし、もう恥ずかしい」 「でもいい思い出になったね」 紫織ちゃんが自分のことのように喜んでくれて、それもまた嬉しい。
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