三つ目の天才道士

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ

三つ目の天才道士

 おうおう、朝もはよからもう行列が。  病院前の道は、おばさん達の行列が続いていた。  呂望は、ゴキブリのように列に入り込んだ。 「ちょいとごめんよー」 「アイヤ!横入りすんなああああああ!楊戩(ようぜん)様に言いつけるわよおおおおおう!」  並んだおばさん達に、ボコボコにされていた。  やっぱり、いるのねここに。  崑崙切っての天才と呼ばれる、三つ目の楊戩が。 「おぎゃああああああ!待て!待って!待ってって言ってるでしょおおおおおおう?!あああいたああああ!久しぶりだのう!楊戩!」  古い作りの小屋のような医院から、幼さを残すような、若者が出てきた。 「申し訳ありません。列にちゃんとお並びください」  楊戩はにべもななかった。  しかし、けったいな騒動が、列の脇で起こっていた。 「師叔(スース)!こっちに来てください!」 「師叔て。こやつ儂を知っていてあの態度か」 「貴方ですか?!こちらの方を石で打擲したのは?!」 「あん?まあ、石があったんでな?」 「姫の主筋でなければ、青雲剣のサビにしているところだ!」  頭から出血しながら、温羅はそう言った。  うん?石で殴られた妖魅の腰に差した刀を見て、楊戩は、 「青雲剣。截教(せっきょう)の宝貝?貴方達は一体。截教と闡教(せんきょう)の混成?」  仙道では、人間を闡教、妖魅を截教と呼んで区別している。  要するに、截教って妖怪仙人だったっけ?正男の漫画の知識は、かなり深かった。 「彼等は日本の強者の集団だのう。なあ楊戩。今、崑崙に危機が起きているのだよ。女媧の金の力で、崑崙は本当に駄目になってしまっておるのだよ。久しぶりに、儂と一緒に戦っておくれ。主の哮天犬(こうてんけん)と、三尖刀(さんせんとう)の力が要るのだ」  ふう。楊戩は黙考して応えた。 「同道するのはいいですが、師叔、日が落ちるまで待っていただけませんか?三尖刀は今、僕のイタリア製の白衣とスーツを乾かす、物干し竿になってますので」 「何つうか、お主も駄目になっとりゃせんか?」  呂望は、無意味に1日待たされることになった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!