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小鳥遊山椒逃走
あーあ。長閑ですねえ?師叔。
ウェイトリー・猫が、暢気な物言いをしていた。
「何か、必要なものとかあります?ローターとか、タンポンとか」
下らねえこと聞くな。とばかりに小鳥遊が吐き捨てた。
「火竜鏢。ここいら一帯全部焼いちまいてえでゲス」
「そりゃあ無理でしょうよ。ローター突っ込んでやりましょうか?」
「ああうるせえ!だったら火炎放射器持って来い!でゲス!ハブ・ユー・ネバー・ビーン・メロー。ア・サム・ア・ストゥーピッド・ウィズ・ア・フレーアアガーン!って歌があるでゲスよ!ハブ・ユー・ネバー・ビーン・メロー・オン・ザ・ウォーターでゲスよ!」
合っていたのメロディーだけで、後半の歌詞とこいつの脳味噌がおかしかった。
「意外っちゃあ意外でゲシた。まさか、あんたが女禍の犬とはお釈迦さんでも知らぬが仏でゲス」
「そうですか?勘解由小路さんは、うっすら気付いてましたよ?」
思い出すように、ウェイトリーは言った。
「やっぱり、あの相模湾でしたねえ。人間傾世元禳引っ込めろとか言われて。まあ、あの辺の水着女には、あんまり興味なかったんですがね?師叔も百鬼姫にも効かなかったし。ああ多分、あの海底の城で、僕が紅水陣を敷いて惚けたのもバレてますね?」
紅水陣。小鳥遊が呟いた。
元来、仙道とは七魄を昇華し、永遠となる道だ。
だが、幾つかの例外を除いて、実際殆どの仙道は七魄が揃っている。
つまり、仙道は宝貝がなければ大したことは出来ない。
「ウェイトリー、あんた――宝貝人間でゲスな?」
「霊珠を核とし、更に近代のサイバネティックを導入した、宝貝人間哪吒Z-R。それが僕です」
「全く。女禍はロクなことしねえでゲスな」
「まあ、スポンサーには勝てないってことです。ところで師叔、処刑命令が出てるでしょう?炮烙か盆蠆か。どっちでしょうね?でも、まあ」
そう言って、手首を拘束したウェイトリーが、小鳥遊を横たわらせた。
「僕の女になるって誓うなら、まあ、助けてあげてもいいよ?小鳥?」
おっぱいを鷲掴み、顎を指でくいっとした。
「眼鏡外すと、ああいい女だ。俺と来いよ。小鳥」
のしかかってきて、ゴスって音がした。
赤ん坊の頭くらいの石が、ウェイトリーのこめかみに、突き刺さっていた。
馬乗りになった小鳥遊は、ケタケタ笑みを浮かべながら、ゴス、ゴス、と何度も石を振り下ろした。
ウェイトリーは、普通に動かなくなった。
「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ヘレンケラーと臨済義玄が同時に降臨していた。
「社稷機に囚われて、次は社稷図?!捕まってばっかりでゲスああああああああ!出口いいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
すたこらさっさと、小鳥遊は逃走を開始した。
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