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人質として嫁いだという実績があれば、それでいい。
これはあくまでもリヒテンベルンへ向けての警告だから、『次はない』とさえ伝えられれば離縁しても問題はない。
その『次』は、国への侵略を意味してるから。
“だから、警告という目的を達成した私はもうこのグランジュでは用済みなのかもしれないけど――”
それでも、期待した。
実家では得られなかった家族の愛を感じられるのではないかと。
期待しても裏切られるだけだとわかっていたのに、もしかしたら、なんて。
“想い想われる家族なんて、政治の道具である王族にはやっぱり高望みなのかもしれないわね”
それでも、少しでもいいからこっちを向いて欲しくて体術も剣術も頑張った祖国での日々。
リヒテンベルンではダメだったけれど、でも。
“私はまだグランジュでは何も頑張ってはいないわ”
――だから。
「誰を選んでも、いいんですか」
「あぁ。誰でも、だ。国から連れてきても構わない」
「約束ですよ」
「あ、でもやっぱり俺の側近は……」
「貴方です」
「……は?」
私のその一言で、濃いアーモンドカラーの瞳が見開かれる。
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