16.迷探偵?いいえ、名探偵だと思うのだけれど

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 クリストフ卿が歩くだけでほうっと息を吐き顔を赤らめるその様子は、彼女の心情が一目瞭然だった。   「どう見ても怒っていたわ」 「はぁ?」  一日観察を終えてミィナに報告がてら私の推理の結果を伝えると、半眼になって目元をピクピクとさせた。 “さ、流石に不敬すぎないかしら?”  もちろん罰するつもりはない。  まるで昔からの友人のようで、むしろ私としては楽しいという気持ちの方が強いからである。  それに私の元に侍女長すら来なかったその理由が王女殿下の命令だったのだ。  主ともいえる彼女からのその命令に背いてまで今目の前にいてくれていることが私には何より嬉しかった。 “とはいえ、私の推理を否定するのは許さないわ!”  この目でみた真実を告げたのである。  私自身この推理には自信があったこともあり、ここは今度こそミィナに信じて貰わねばと気合を入れた。   「いい? クリストフ卿以外誰も連れずに歩いていたの、しかも顔を赤くしながらよ。その場に彼しかいないのだから、怒りの対象はクリストフ卿で間違いないわ」
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