6.お忘れ物(私)が勝手について行きますね

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 それなのに私が頼んだ「見張って」という言葉を律儀に守ろうとしているのか、彼女は王城のメイド服ではなく私に出してくれたような服装に着替えて戻って来てくれた。 “こんなにしてくれるようなことをしたかしら”  私がしたのは手荒れが治るようにと保湿液を渡しただけ。  王太子妃という立場の私とメイドの彼女だと当然王太子妃の方が権力を持っているように思えるが実際は反対で、ただの人質として来た寵愛もない私の力なんてほぼないに等しかった。  王族なんて、支持を得られなければただの木偶の坊。  使用人からそっぽを向かれればたちまち何も出来ず、籠の中で緩やかに死ぬ。    現にミィナ以外の侍女が私の部屋に訪ねてきたことなど一度もない。  確かに彼女の話し方や態度などは主君に向けるようなものではないのかもしれないが、そもそも私は彼女の主君ではないし、気安く接してくれるのは正直嬉しい。  それに彼女はたった一人、ただ一度私物をプレゼントしただけでこんなに私の為に動いてくれているのだ。  感謝してもし足りないだろう。 “せめてミィナに尊敬して貰えるような妃になりたいわ”
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