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ミィナに案内して貰いつつ向かった厩舎で、掃除中の少年に声をかけた。
「急ぎでイースまで届け物があるのだけど、馬力のある馬を一頭貸して貰える?」
「イース?」
「知らない? 今日王太子殿下が視察に向かわれたんだけど、大事なものをお忘れになったのよ」
“さすがに人質が馬を貸せって言って貸す人なんていないもの”
しれっとそう言った私に、唖然としたミィナが慌てて私の服の袖を引き耳打ちする。
「な、何平然と嘘をついてるんですか!」
「あら。何も嘘なんてついてないわよ」
「だって忘れ物なんて」
「してるじゃない、私という『妻』を忘れているわ」
ふふん、と鼻を鳴らすとぽかんとミィナが口を開ける。
「ね? 嘘は言ってないでしょ」
パクパクと口を動かすミィナを無視し、再び少年へと向き直った私は再びにこりと笑みを作り口を開いた。
「という訳で、馬、いいかしら?」
女二人、しかもお仕着せじゃないことに多少の不信感を持っていそうではあったが、私があまりにも堂々としていたのと視察の目的地を知っていたことで納得してくれたのか、厩舎の中を指差した。
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