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プロローグ:人質姫は、夢を見る
大国グランジュから、隣国とはいえ弱小国家のリヒテンベルンへと婚姻の申入れがあったのは、隣国という立地を理由に他国から唆されて正直嫌がらせレベルの小競合いを仕掛ける我がリヒテンベルンへの警告だろう。
「セヴィーナ姫様、本当に誰も連れず一人で行かれてしまうのですか?」
「そうよ。誰かを、……ジーク、あなたを私の巻き添えで処刑になんてさせるわけにはいかないもの」
侵略ではなくあくまでも婚姻という形での同盟を求めたのは、圧倒的な軍事力を見せつけその他の国を警戒させるより、グランジュ側からすれば何一つプラスにならない婚姻を選んだことで無意味な戦争はしないという意思表示。
もちろん、また何か仕掛けてきたらお前の娘は首だけにして送り返すぞ、という警告でもある。
――つまりはただの人質だ。
“それをわかっているから、お父様……、いえ、陛下は”
「それに何故姫様が行かねばならないのですか! この国には姫が三人もいるのに何故三女のセヴィーナ姫様が……っ」
「それは、私が自ら望んだからよ」
「姫様が?」
私のその言葉にジークが唖然として目を見開く。
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