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朱里は何も、同性愛者というわけではない。
しかし、彼女が恋愛できるようになるのはまだ先のことだと思っていた。というのも、幼稚園の時から朱里は男の子にいじめられることが多かったからである。
『うえーい!妖怪ツインテール!くやしかったらここまでとりに来いよお!』
『ばーかばーか!』
『かけっこビリ、ビリ女ー!』
『うわあああああああああああああああああん!やだよお、返してよ、私のハンカチ!うわああああああああああああん、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!』
彼女はよく、お気に入りのハンカチとか、キーホルダーとかを男の子たちに取られていた。そして、取り返したかったら追いかけてこい、をやられていたのである。中学校になってからは流石にその手の馬鹿をやる奴はいなくなったが、幼稚園から小学校の間はずっとその調子だった。
多分、彼女が可愛かったからだろう。
男子小学生あるある。好きな子には悪戯したくなるモード。実際、気を引きたいだけの彼等が奪った朱里の持ち物を壊すようなことはなかった。とはいえ、自分が大切にしているものを強奪し、あげくからかってくるような男子たちをどうして好意的に見られるだろうか。
殴られたことはなくても、悪口だけでも十分心は傷つくのだ。朱里が、男子に対してトラウマを持つようになってしまうのも当然のことだったわけである。
そして、彼女がいじめられている時、助けに入るのは必ずあたしの役目だったわけで。
『ぐおらあああああああああああああああああああああああああああああああ!てめえら、朱里をいじめてんじゃねえぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!ぶんなぐられてえかあああああああああああああああああああ!!』
『ぎゃああああああああああああああああああ!や、やべえ、ゴリラ天里だ、にげろおおおおおお!』
『にいいいいいいがああああああああすうううううううううううかあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
恐らく、追いかける自分の形相はかなりのものだったことだろう。最終的には男の子たちが大泣きして、朱里のハンカチなどを返してくるというところまでテンプレだったのである。
なんせ朱里とよく似た顔で、しかし朱里よりずっとかけっこも早くて喧嘩も強い女が鬼の形相で襲ってくるのだ。普通に怖かったに違いない。まあ、朱里を虐めるともれなくあたしがブチギレる、をいつまでたっても学ばない奴らもアホだったとは思うが。
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