背中押すハピネス

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『これは、みんなでやる課題なんだよ。田中さんが自分の意見を言わないまま終わっちゃったら、田中さんが一つも参加しない課題になっちゃう。それをみんなの意見として発表して、田中さんは悔しくないの?つまんなくないの?自分の意見が一つも入ってないレポートを、気合いれて発表に参加できる?そんなの、ちっとも楽しくないと思うんだけどな。……なんでもいいよ、勇気出して言ってみて。僕だってそういうの苦手だけど、どうせやるなら全力で頑張りたいって思うし、その方が面白いんじゃないかって思うんだ。田中さんはどう?』 「私、人に甘えるの得意だって自分でも思ってて。だから、お姉ちゃん以外で、それじゃ駄目って叱ってくれる人もいなかったというか。……西幡くんが、私のために叱ってくれて、一緒にやろうって誘ってくれたのが嬉しかったというか。……そういうのがあったら、いつの間にか目で追うようになっちゃってた、というか……」  ああ、わかる。あたしは苦笑いするしかなかった。  西幡は不器用なやつだ。困ってる人を見たらほっとけないし、誰かが納得できるようになるまでとことん吟味したいタイプ。一人の説得とか一つの課題についつい時間をかけすぎてしまって失敗することもあるほどだ。  だからこそ、人の心を蔑ろにしないとも言える。例えそれが、協調性がない、特に親しくないクラスメートの女の子相手であったとしても。 ――そういうところが、好きになったのか。  そして、同時に思ったのだ。  自分を全肯定して、甘やかしてくれるだけの人じゃない。そういう相手を、彼女はちゃんと好きになることができる人間だったのだと。 「……ま、そういうことなら納得。見る目あるじゃん、あんたも」  肩をすくめて、あたしは続けた。 「で、あいつに告白したいわけだ。去年はできないままだったから今年こそ、と」 「うん。……物凄く親しいわけじゃないから、メアドも電話番号も何も知らなくて。もちろんLINEとかも送れないから……古典的だけどラブレターをね、靴箱に入れようと思ったんだけど」  朱里はそう言いながら、バッグから封筒を取り出した。 「……去年書いたのに、まだ入れられてなくて。夏休み最後の日にしよう、文化祭終わったらにしよう、三学期になったらにしよう……みたいに先延ばしにしちゃってずるずると」 「あんたねえ」 「だって、嫌われたくないんだもん!でも……だけど、卒業する前にはなんとか、気持ち伝えたくて。で、できれば、その、そう言う関係にもなりたいし……」 「はあ」
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