Intro. What's your ETA?

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「ココロさんは最近、二冊同時に書籍を出版されたんですよね! まずはこちら。エッセイ集 ’ココロもよう’ 」 「はぁい! 私のこれまでを綴ったエッセイで、撮り下ろしの写真も……」  今日の出演は、出したばかりの本の宣伝のため。番組進行役に話を振られ、撮影秘話を話したり。和気あいあいとした空気の中、番組は進む。  「少しだけエッセイの内容に迫っても? お祖母様が営んでいた喫茶店で歌ったことが、この世界を志すきっかけになったとか」 「はい。あと私はセルフプロデュースに興味があって──そうなんです♡ じゃあ、事務所も自分で作ってみようかなって。大きな挑戦でした」  どこにでも転がっているような、当たり前の質問。  答えなんてテンプレート化されている。自分をアイドルというベールに完璧に包むのか、それとも赤裸々に語るっていうフォーマットを使うのか、どちらかしかない。  私のような駆け出しのアイドルじゃ、ベールに包んだら興味を持ってもらえない。だから私は「赤裸々に語るココロ」になりきって答える。嘘はつかない主義だよ? ほんの少しスパイスをまぶしてるだけ。  ほら、今日もまた聞かれる「ココロさん、社長もやっているんですか?!」って。    どこにも拾ってもらえなかったとか、オーディションに落ちまくったなんて、恥ずかしくて言えないだけ。  なんとか引っかかった地下アイドルの事務所は一年後に倒産。名もなき地下アイドルグループの一員だった私を、拾ってくれる事務所なんてどこにもなかったから。
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