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エマっていうのは──私の目下のライバルだ。
彼女は大手芸能事務所の女子アイドルグループの一員。露骨すぎって言いたくなるぐらい、ゴリゴリに売り出し中。
このルームウェアブランドの、次の広告モデルを決めるオーディションに、私も参加している。何度もカメラテストを受けて、最後に残ったのが私とエマだと知らされたのは、少し前のこと。
「アンタとエマ。ターゲット層の反応がいいのはどちらか、見たいんじゃないかしら? 死ぬ気でがんばってきなさいよォ!」
「そんなプレッシャーかけないでよぉぉ」
「あら。アタシ言いすぎたかしら? そんなに気負わなくても大丈夫ヨ、このキャンペーンのメインモデルは男性だから」
「えっ、そうなの?」
「ほら、ココ。クリスマスを一緒に過ごす二組の男女が、って書いてあるでしょ。扱いによってはオマケね?」
「えーっ。私の人気、これで爆発すると思ったのに!」
街のビルボードに私が大きく映って「あの子は誰」って。事務所に問い合わせが殺到して、ギャラが倍になって……それはさておき。私とエマ、どちらが次の仕事を取れるか、これが勝負なら絶対に負けられない。
「二組の男女って書かれているから、私はそのうちのひとりってことだよね?」と、私はシゲルちゃんに確認をした。せっかくなら、一緒に仕事する人はイケメンがいいなとか。えっと、それで。撮影中に指先が触れて「あっ、ごめん」って。目が合って──どうしよう、恋に落ちちゃったら!
──ダメダメ! 私には静琉くんという心に決めた人がいるのに!
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