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「これが今度の撮影で使う──あ。ココロちゃんが着る予定のものは確かこの辺の」
「わ、かわいい! 私、淡い色が多いんですか?!」
「そうだね、パステル系の色が多めかな。あ、そうそう。今回のテーマはね」
今回のテーマはふたつあって。
付き合いたてのカップルと、交際3年目のカップル、って役割をそれぞれ演じてもらおうと思って。
前者は、着用するアイテムも小物も爽やかなもの。
後者は、少し大人っぽいイメージのものとか、ユニセックスアイテムが中心だよ。
フリーサイズのものも多いから、ココロちゃんの身長とスタイルなら問題ないと思うんだけど。
そこまで言うと、スタイリストさんは手に持っていたタブレット端末で「こんなイメージなの」と。スタイリングサンプルを見せてくれた。
「今回は、Dazzlingっていうボーイズグループのおふたりがメインの企画で。このグループ知ってる?」
「そ、そんなに詳しくなくて……さっき移動中の車で勉強させてもらいました」
「いつも勉強熱心だもんね」
「あ、えっと……」
Dazzling、という言葉がスタイリストさんから飛び出して、心臓が跳ね上がった。
しどろもどろになりながら、なんとか取り繕ったけれど──いざ会えるとなると、想像するだけで緊張して吐きそうだし。でも、仕事ってことを忘れるわけにはいかないし……。
本人たちがいるわけでもない衣装合わせで、これはちょっとダメ。
ココロの心、ここにあらず……とか、うまいこと言ってる場合じゃない! それに、こんな状態じゃ撮影当日はどうなっちゃうんだろう。
思いっきり目が泳ぐ私を見たスタイリストさんが、不思議そうな顔をした。
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