Interlude.1 ココロのむかしばなし

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 喫茶店の取り壊しをきっかけに、私たちは引越しをした。  大きな街と新しい家。私はすぐにその生活にも慣れた。  ……転校先の新しい小学校を除いて。    私が転校したのは小6の春。  みんな何年も一緒に過ごしていて、とっくにグループができている。  都会の女の子たちはみんなおしゃれだったから、私もそれについていこうと必死にがんばった。  早起きして、かわいい髪型にしようとおばあちゃんに手伝ってもらったり。前よりも洋服に気にするようになったり。でも、がんばればがんばるほど空回りして、私はすぐに疲れてしまった。  この小学校にずっといるわけじゃない。  あっという間に卒業だって思えばいい。私はそう考えることにした。 「わぁ。この部屋いいなぁ」  毎日しとしとと雨が降り続き、傘が手放せなくなった梅雨の頃。  校舎の隅にある音楽室……の、もっと奥にある音楽準備室でこっそり過ごすようになった。  そこは音楽クラブの子達が使う金管楽器や授業で使うものがたくさん置かれている。その後ろには大きな両面本棚があって、楽譜とか本がぎっしりと詰まっていた。  最初は気にも留めなかったけれど、その両面本棚の反対側──準備室のさらに奥に回ると、使わなくなった古い楽器や楽譜スタンドとか、埃を被った備品が所狭しと置かれていた。  そして、一番奥には使われていない古ぼけたピアノがあることに私は気づいた。
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