Interlude.1 ココロのむかしばなし

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 私が「あぁ、ピアノを弾こうとしているんだ。でも、単音って」と思ったのと同時に、音を探るみたいな、鼻歌のような小さな声が聞こえた。  音楽は女の先生だし。男子の声っぽいから、これは先生じゃない。  一体誰が、こんなところで何をしてるんだろう。    でも、いきなりカーテンから飛び出すわけにもいかないし。身動きが取れなくなった私は裏側で息を潜めるしかなさそう。しばらくすると声の主が咳払いをして、それからピアノの音が鳴り出した。  今度は単音じゃない、たくさんの音が重なって、和音になって。右手と左手、両手で弾いているのは聞いていればわかるけれど、クラシックじゃなかった。メロディーみたいな音やメインフレーズもない、軽やかな和音。  ──もしかして、歌う? 弾き語りってヤツだったりして?  私がそう思ったのと、声の主が歌い出したのはほぼ同時だった。 「♪〜〜」     声変わりの真っ最中の声は、ちょっと掠れていた。でも、頭の上から声を出してるみたいな、とても通る爽やかな歌声。音を伸ばす時、かかるビブラートがとてもきれいだなと思った。  ──え、歌すごい!
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