Interlude.1 ココロのむかしばなし

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 こんなにかっこよくて、歌も上手なのに自信がないなんて。私が彼だったら、絶対に自慢するのに。    もっと自分の歌に自信を持った方がいいよって。ある日私は鼻息荒く彼に語った。    私の勢いに押された彼は、最初はちょっと困った顔をしていた。けれど、ひたすら褒め続ける私を前に、その気になってくれたのか、それとも呆れたのかはわからないけど──実は、と。笑ってもいいよって言いながら、彼は夢を教えてくれた。 「歌手になりたいんだ。ダンスもさ、体育以外でも少しやったことがあってさ。嫌いじゃないから、アイドルとかでもいいし」 「そっかぁ。きっとなれるよ! 歌、うまいもの……私も歌手になって金儲け…ゴホンゴホン」 「え、どうかした?」 「あっ、なんでもないよ! じゃあ、私はファン1号だね!」  歌で誰かを笑顔にしてあげたらいいな、彼はそう言うと笑った。
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