Interlude.1 ココロのむかしばなし

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 ある日のこと。  私が交通安全のお守りを渡すと、彼は不思議そうな顔をした。 「これ、僕に?」  「うん。ほら、この前…」 「でも、それならなんで交通安全のお守りなの」 「え、うーんと。それはそのっ。いいのがなくて」  うん、それはそうだよねって。私も思った。 『母さんが入院してて』   彼はこの前、そんなことを言った。  彼のお母さんが手術すると聞いたのは、それからしばらくしてから。  いつも穏やかな彼がとても不安そうにしている姿を見て、私は励ましてあげたいと思った。だから、学校の帰りに神社に寄って、お守りを探したんだけど──交通安全と安産祈願しかなかった。どっちがいいですかって神主さんに聞いたら、とても困った顔をされたし。でも、安全って入っている方がいいよねって思って、それを選んだ。 「わざわざ行ってくれたんだね」 「てへ♡」  ちょっと手術と違うけど、でも安全って言葉が入ってるでしょ。  そう私が説明すると、彼は「あぁそっか」と頷いた。 「神社行ってお守り買うとか、何か身につけるとか、僕は思いつかなかった」 「私もたまたまだよ?」 「妹を公園連れてった時、ねだられて一緒に四つ葉のクローバーとか探してみたけど、全然なかったし」 「へ〜」
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