20人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
「ココロちゃん、風邪引いたのかい? 学校は休んだ方がいいねぇ」
「へっくしょい!」
風邪を引いた私は、その次の週、何日か学校を休んだ。
終業式はなんとか登校したけれど、学校はそのまま夏休み。
──二学期にまたここで会おうねって、言えなかったな
彼に挨拶もできなかったけれど、9月になればまた会えるし。
そう思いながら、私は夏休みを過ごした。
だけど、その「また」は二度とやってこなかった。
二学期になって、いつもの曜日のいつもの時間が何度来ても、彼は現れなかった。こっそり隣のクラスの教室を覗いたこともあったけれど、彼の姿はなかった。
「何かあったのかな」って。なんだか不安になってきた私は、廊下で隣のクラスの担任の先生を捕まえた。
「藤崎くん? 引越しで転校しました」
「……え」
先生の「転校」って言葉が、頭の中でぐるぐる回った。頭の中でガンガン響いた。これだけ見かけないって、もしかしてって。胸の中に押し込んだネガティブな気持ちを、心の準備もできないまま引きずり出されたみたいだった。
なんて言えばいいかわからなくって、自分の気持ちもよくわからなくって。
私は先生にお礼を言うことも忘れ、気がついたら音楽準備室に向かって駆け出していた。
最初のコメントを投稿しよう!