Interlude.1 ココロのむかしばなし

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 地下アイドルグループが解散して、流されるままに事務所を立ち上げ、社長になってしまった私に待ち受けていたのは、社長のオシゴト。  そして高校に進学した私は、事務所のテーブルに積み上げられた大量のビジネス書を放課後毎日読み続けた。居眠りをしようものなら、隣の席にいるシゲルちゃんに叩き起こされるし。   「ココロ。アンタ社長なんだから経営の本とかも読みなさいよォ」 「ぎょ、業務提携とは……えぇと」 「そうよぉ。ウチは弱小だけど、業務提携先が営業かけて仕事持ってきてくれるって仕組みなの」 「その代わりこっちの取り分は減る。ふむふむ」  ──えっと、私って歌が好きだし。だから歌手になっておばあちゃんの喫茶店を……あれ?  本来の目的となんか違くない? と私が我に返った頃、ようやく準備もできたから、と。私は念願のソロデビューを果たした。 「こっからが本番よ、アンタ死ぬ気でがんばりなさい!」 「も、もう忙しすぎてなにがなんだかココロわからなくなってきた……!」  デビュー曲が大ヒット! 一躍大人気アイドルに! そうなるほど現実は甘くはない。それでも、地下アイドル時代よりも、大きなライブハウスで。その次は小さなホールでライブができるようになって。扱いはとっても小さいけれど、雑誌とか広告に載ったり。たった数秒だけど、テレビ出演が決まった時はシゲルちゃんとお祝いに焼肉を食べに行っちゃった。  ……出演料(ギャラ)よりも焼肉代のが高いって、経理のおばちゃんに怒られた。
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