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もちろん、いいことばかりじゃない。
アイドルなら、女子なら。やってみたいと思う人気のコスメの特集モデルとか記事とか。
誰だって出たい人気の音楽番組とか。
そういうのはしがらみが多いから、とシゲルちゃんは教えてくれたけど。私にも事務所にも、そういうのに選ばれる人気や力は、まだない。キャスティングのオーディションだって、ほとんど落ちる。だから、舞い込んできた仕事を必死でがんばるしかなかった。
学校と事務所、それから仕事現場に。歌やダンスの練習スタジオ。私は家に帰ると着替えることも忘れ、そのまま床で爆睡することも──その時は、私が倒れていると勘違いしたおばあちゃんの悲鳴で起きた。
うまくいかないこととか、嫌なことがあった日の夜は、私は机の引き出しから宝物を取り出しては、ずっと眺めていた。
何年前になるだろう。
彼にもらった、四つ葉のクローバーとあの手紙。
四つ葉のクローバーはいつまでも持っていられるように、栞にした。
本当はずっと、探していた。
藤崎静琉という、懐かしい彼の名をインターネットで検索した。日本の芸能事務所のタレント一覧をくまなく調べた。
もし彼も、同じ夢を追っているなら、どこかで。
デビューしたり、芸能事務所に所属しているかもしれないと思ったから。
でも、どうしたって彼の名は見つからなかった。
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