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「もう一冊は、本名の加納心 名義で書かれたビジネス書 ’今、社長に求められるのは共感力’ 。ココロさんはアイドルとして活躍すると同時に、事務所社長ですから。今度は社長としての心さんに質問なんですが……」
二冊目の本を紹介され、私はすうっと息を吸い込む。笑顔から一転、キリッとした表情に切り替え、先ほどよりも声のトーンを落とすと、テンポよく答えていく。
「社長としての私は、アイドル・叶ココロにどう価値を見出してもらえるかを考えています。リーダーに求められることですか? 自分以外の誰かと感情と体験を共有すること、他者のそれを察することでしょうか」
これってまわりの大人が言っていた受け売りなんだけれど。でも私もそう思うから、それでいいのかなって。その後も話は続いて、あっという間に出番の時間は終わりを迎えようとしていた。
「ゲストの叶ココロさんでした」
「今日も世界平和にな〜れ♡ ありがとうございましたぁ」
最後はまたアイドルとしてとびきりの笑顔で手を振ると、私は出演を終えた。
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