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藤崎静琉という名で探し続けても、見つからない理由がようやくわかった。
彼は日本にいない、韓国の芸能事務所にいるのだから。
彼は藤崎静琉ではなく、K-POPアイドルのシズル。
拾い上げたスマホの画面に映る彼は、最後に見た時と変わらないサラサラの黒い髪、切れ長の瞳。
間違いなく本人だと思った。
口角を上げて微笑む姿は──ちょっと、大人になったなって思った。
「夢、叶えたんだね。静琉くんも」
懐かしさが込み上げてきて、あの時の甘酸っぱい気持ちで胸がいっぱいになった。伝えられるなら、伝えたい。私のこと覚えてますかって。
……でも、きっと覚えてない。
静琉くんだって、デビューを勝ち獲るために毎日歌やダンスの練習に必死だったはず。
なんで韓国にいるのかとか、そういうのはわからないけれど。韓国の芸能事務所でデビューを目指すのって、大変だって親友が言ってた。最初は事務所の練習生っていうのになって、それも狭き門。そこからデビューは奇跡みたいな確率だって。
しかもこれだけ大きく扱われることは、それなりに力がある事務所のはず。
遥か昔に音楽準備室でちょっと話したことがあるぐらいの私のことなんて、覚えているどころじゃない。
覚えてくれていたら嬉しいけれど、そんなの私の勝手な妄想。甘い夢みたいなもの。
でももし彼と、いつか再会することができたら、お礼を言いたいと思った。
手紙受け取ったよって。四つ葉のクローバーを見る度に、がんばろうって励まされたよって。
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