20人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
数分後。
関係者の前で、悪びれもせず責任転嫁をするエマを見て、私は驚きのあまり口を開けたまま固まってしまった。
「ココロちゃんがピンクのルームウェア、着たくないとか言うの! あーん。そういうワガママ、よくないよ? わたしの方がそういう可愛い色似合うと思うし、代わってあげようかなって?」
──えええええ!
何言ってんの。っていうか、どの口が言ってんの?
でも、こんなワガママが通るわけがないし。スタッフさん達はみな、困惑顔だし。壁際でコソコソと始めたのがその証拠──と思ったのに。
「わかりました、今回はおふたりの役割を交代しましょう」
あっさり、それが受け入れられてしまった。
……エマの事務所は、老舗のキューブアーティスツっていう、力のある大きなところ。しかも彼女は所属するアイドルグループの中でも人気のメンバーだ。
私の事務所じゃ。たけきのこ企画じゃ、それを跳ね返すことができない。
弱小事務所の二流アイドルが、大手事務所のアイドルと同じ現場で仕事ができるだけでも、すごいこと。
ここで言い返したり、文句を言ったら、この仕事が台無しになってしまう。もしかしたら次の仕事を失ってしまうかもしれない。それはアイドル・ココロとしても、社長・心としても、絶対にしてはいけないことだ。
「……」
俯いて、こっそり唇を噛みしめることぐらいしかできない。
何も言えず、ただ受け入れることしかできない自分が悔しかった。
最初のコメントを投稿しよう!