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「はぁ? わたしが話しかけてるのに、どいつもこいつもなんなのよっ!」
「え、エマちゃん。落ち着こう。ね、ね?」
プライドをひどく傷つけられた、と。去って行くノアさんの後ろ姿を見ながら、エマはマネージャーさんに当たり散らしていた。
エマの機嫌を取らなきゃいけないマネージャーさんって、大変だなぁって。私はどこか他人事のようにその様子を見ていたけれど、その後は私もエマも撮影準備に入り、慌ただしく時間が過ぎていった。
先にヘアメイクを終えたのは、どうやら私。撮影前にリラックスしようと思って、廊下の隅でグッと腕を伸ばしたり、深呼吸したり。時間を潰していた。
いつもならこうやって深呼吸をしながら、集中力を高めていくのに。
「静琉くんがペアだったら……話すチャンスだったのになぁ」
だって、本当は私だったはずなのに──。
ポロッと本音が口から漏れてしまったのは、今だけ許してほしい。
思ったよりその声が響いた気がして、私は慌てて口を閉ざした。
誰かに聞かれちゃったらまずいし。
しっかりしないと。仕事は仕事、いい仕事をしなきゃ。
私は両手で頬をペチペチと叩き、自分に喝を入れた。よし! お仕事がんばるぞ! って。
……まさかノアさんに、私の愚痴を聞かれていたなんて。
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