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相手役のエマに向かって、それからカメラに向かって。
微笑む静琉くんは、キャーって叫びたくなるぐらいかっこよかった。
撮影のテーマに合わせて、今日の彼は前髪を上げているから、表情までよく見える。
伏目がちな目元に、ライトが当たって影が落ちる。
それから、彼はゆっくりと顔を上げ、隣にいるエマに優しく微笑む。
──かっ、かっこいいよぉ〜!
心の中で絶叫する私をよそに、ふたりの撮影は続いていく。
指でハートを作ったり、カメラマンさんやディレクターさんの指示で顔を寄せ合ったり。
悔しいけれど、エマだって。私に比べたら圧倒的にカメラに慣れてる。
こういう撮影だって、初めてじゃないはずだ。
恥ずかしそうな表情を見せ、次の瞬間には恋するオンナノコの顔で相手役の静琉くんを見つめるエマ。
……見たいと言ったのは私だけど、見れば見るほどエマが羨ましくなる。
それから、見れば見るほど、こういう撮影に慣れてないのは自分だけなんだって。まだ撮影していないのにわかる。
そんなんじゃダメ。
仕事だと思って人気アイドルを見て勉強しなきゃって。
そう思おうとしても、どんどん自信が失われるばかりだった。
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