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静琉くんとエマの撮影が終わると、いよいよ私の出番。
私はふうっと息を吐き出すと、撮影セットの前に立つ。ノアさんも少し遅れてセットの中に入ってきたから「改めて挨拶しなきゃ」って。私は咄嗟に頭を下げた。
「あぁ、ココロちゃんだっけ。今日はよろしくね」
「はいっ、改めてよろしくお願いします」
「そんな硬くならなくていいよ。ま、オレは相手は誰だっていいし」
「いえ、そんな。ご一緒させていただけて光栄です」
ノアさんと一緒にセットのソファーに腰掛けると、スタイリストさんやヘアメイクさんが駆け寄って来た。あれやこれやと私たちの髪や衣装を整えてくれる。
私だって、アイドル・叶ココロとして写真撮影してもらうこともある。でも、もっと規模が小さいっていうか。それに、人気の男性アイドルと撮影なんて。
こんなに立派なハウススタジオで、こんなに大勢のスタッフさんに囲まれて写真撮影されたことなんて、ない。ソファーに腰かけ、周囲を見渡した私は、この仕事の大きさに改めて圧倒されてしまった。
「ココロちゃん、リラックス、リラックス! ノアくんは普段、モデルもやってるから。今回の主役は彼だし、リードしてくれるから。そんなに緊張しないで」
隣に座るノアさんは、髪の毛を整えられながら、ディレクターさんと最終チェックをしている。その目つきは真剣そのもので、私は静琉くんとエマの撮影を見学していた時以上に不安が増していく。
ノアさんについていけるだろうか。
いい仕事したねって言ってもらえるだろうか。
そんな私をよそに、カメラマンさんが口を開いた。
「じゃ、はじめようか」
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