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演技じゃなくて、険悪なムードなのに。スタッフさん達には、これがコンセプトに合わせた表情やポーズに見えたのかもしれない。
ディレクターさんがこちらに向かって「いいよ」と親指をグッと突き上げたのが見えた。カメラマンさんも満足げな顔で頷くと、再びシャッターを切りはじめる。
カメラを見て、私に目線も送って。どこを切り取っても完璧な状態で、シャッターを切られ続けるノアさんが、小さな声で私に問いかけてきた。
「さっき何か言いかけたけど、なに」
「あの。群がるとか……さすがにそういう言い方は」
私にとって、静琉くんは初恋の相手で。
いつか再会できたらってずっと願っていた。
一緒に仕事できるって聞いて、浮ついてしまったのは否定できないけれど。
それでエマのように媚を売ったりとか。そんなことは考えていない。
ただ──伝えたいだけ。
あなたをずっと、探してましたって。会えて嬉しかったって。
「群がるって言葉がピッタリじゃん? さっき廊下で、静琉と話すチャンスがとか言ってたのはキミだろ」
「え?! ち、違います」
顔から、血の気が引いていくのがわかった。
まさか、廊下でひとりで愚痴っていたのを聞かれていたなんて。
ノアさんが切り取った言葉。静琉くんを狙っていると勘違いされたって、おかしくはない。
「何が違うの、あの子とキミの。オレらからしたら全員同じ。Dazzlingのメンバーってわかって寄ってくる女」
「だから、違いま……」
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