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「──それから言っとくけど、あいつは寄ってくる女に冷たいって有名だよ」
ノアさんは私の言葉を遮ると、ピシャリと言い放った。
違う、それは違う!
初恋の相手で、夢に向かってがんばっている時もつらい時も心の支えになっていたから──静琉くんからもらった四つ葉のクローバーを見る度に。
だからそのお礼を伝えたかった。それだけでもよかった。
でも、いつどうやって名乗ったらいいのかなとか。その決心とかもまだついてなくて。
……この話をノアさんに今、言ってもきっと信じてもらえないし。
何言ってるんだって笑われるに決まってる。
うまくポーズを取れない自分と、ノアさんに勘違いされたままの自分への悔しさと、それから…何もかも、全部。
うっすらと目に涙が浮かんだのが自分でもわかった。だから私は、それを必死で堪えようと唇をギュッと真一文字に結んだ。
「なに涙目になってんの。オレ、泣き落とし嫌いなんだけど」
「なっ、泣いてません」
「んー、でも。いかにも気が強そうな子の泣き顔は悪くないわ。静琉の代わりに遊んであげようか?」
オレ、静琉よりも人気なんだけど?
たまにはキミみたいなタイプもいいかな。
まるで私を挑発するみたいなノアさんの言葉に、頭の血管が一本ブチっと切れたような気がした。
そんなんじゃない。
馬鹿にしないで。
「いい加減にして」
次の瞬間、私は反射的に彼の頬を引っ叩いていた。
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