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唖然としたノアさんはほんの一瞬、固まったけれど。びっくりしたように目を見開いて私の顔を見つめてきて──私は我に返った。
──やばい、仕事失った、私終わった……!
スタジオ中がしん、と静まり返った。
横目でチラッとスタッフさんの様子を見たけれど、やっぱり揃って固まっていて。
撮影のための演技なのか、それともモデル二名にトラブルが発生したのか。
どちらなのか、判断できなかったんだろう。遠くで腕組みをしながら、撮影の様子を見ていたディレクターさんが、中断させようと慌てて撮影スペースに駆け寄ってきた。
その時。
隣に座るノアさんが、それをけん制するように手を挙げた。
「トラブルじゃない、このまま続けさせてください」
周囲にそう伝えると、ノアさんは私に叩かれた頬に手を当てた。
それから、まるで驚いた演技でもしているみたいに、もう一度目を見開く。
すると、ファインダー越しにそれを見たカメラマンさんが再びシャッターを切り始めた。
「今までほったらかしにして、ごめんな」
「へっ?」
その言葉と共に、ノアさんが私の頭を引き寄せた。
何が起こったのか、私は一瞬頭の中が真っ白になったけれど。ノアさんは目が合うと「オレに合わせといて」って。私に向かって小さな声でそう言った。
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