11.ルピナス視点*昔と今のヴェルゼ

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11.ルピナス視点*昔と今のヴェルゼ

 ヴェルゼと組み、妖精の花を探す。  さっき観た映像の余韻は残ったままで、距離を開けてヴェルゼの後ろを歩いていた。森の中は段々と霧が濃くなってゆく。そして、花を探しながら歩き、よそ見をしているうちにヴェルゼの姿を見失った。  どうすればいいの?  この森に来たのは初めてだ。まして霧が濃く……。完全に道に迷った。何も見えない道の中で聴覚が研ぎ澄まされる。獣のような声が聞こえてきた。そんなには遠くない場所に、いる。ひとまず木に背中を任せ気配を消した。目の前に突然、霧で正体が分からないがとても大きな影が現れた。直感で敵だと悟る。死を覚悟しながらも、ヴェルゼから預かった鈴を鳴らした。  影がひとつ増え、ふたつの影が揺れる。    ひとつ消えた。 「ルピナス、大丈夫か?」 「……本当に助けに来てくださるとは思いませんでした」 「ルピナスが危険な時は、必ず助ける」  ヴェルゼの頬には傷が――。   「今怪我されたのですか?」 「いや、たいしたことはない。ルピナスが無傷ならそれでいい」 「でも……」 「気にするな。霧で花が見えぬだろう。こうしよう」  ヴェルゼは魔法で霧を消した。   「離れるな、絶対に。そなたがいなくなったらもう我の生きる意味がなくなる」  映像の中での冷たいヴェルゼと言動が全く違う。ずっと繰り返し頭の中に流れていた、冷たいヴェルゼの映像画面が乱れ出し、一瞬砂嵐になる。  私の全てを、今のヴェルゼになら委ねてもいいのだろうか――。
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